”家族信託”の利用が効果的な4つの事例

家族信託

2024年8月14日

 前回、放置空き家化を防ぐ手段として注目の”家族信託”をご紹介させて頂きましたが、その家族信託が効果的な事例を見て行きたいと思います。

①認知症による資産凍結対策

 信託契約の締結により、信託財産は受託者が管理することになります。不動産は所有権移転登記により名義が受託者に変更され、受託者が形式的な所有者となります。

 そのため、委託者が認知症となってしまっても、管理権限・売却権限は受託者がもっているため、適切なタイミングで適切な対応を行うことができます。

②不動産の共有対策

 不動産が共有名義になっている時、そのうちの一人でも認知症になってしまうと、売却を含めた重要な決定ができなくなってしまうおそれがあります。

 また、認知症にならずとも、各共有者に相続が発生したことにより円満な共有関係が崩れ、賃貸経営や不動産の管理・売却等に支障が出るおそれもあります。

 家族信託により、管理権限・売却権限を受託者に集中させることによりこのような事態を防ぐことが可能です。

③将来的な不動産の共有回避

 不動産が共有名義だった時のリスクは前述のとおりですが、相続人の一人に不動産を単独相続させると、他の相続人にはそれに見合う代償財産がなく、不公平な相続になってしまうという場合もあります。

 この場合、家族信託により受託者を不動産の相続をさせたい相続人とし、受益権を相続人で平等に共有させれば、共有名義のリスクを回避しつつ、平等な相続を実現させることができます。

④一族以外への資産流出の回避

 例えば、先祖代々受け継いできた大切な不動産を長男に相続させたいが、長男には子供がいないためその次は次男の子である孫に相続させたいと考えているとします。

 しかし、遺言では財産の承継先を一代限りしか指定できません。民法には「所有権絶対の原則」があるため、相続や贈与で受け取った(※所有した)財産については、受け取った本人しか次の承継先を指定できず、元の所有者(※被相続人や贈与者)の意思を法的に反映させることはできないからです。

 一方、家族信託においては「信託受益権」という債権を承継させることになります。そのため「所有権絶対の原則」が適用されず、数世代先まで承継先の指定が可能となります。

 前述のうえで、家族信託のメリット・デメリットを見てみましょう。

”家族信託”のメリット・デメリットを知りましょう。

(家族信託のメリット)

①委任契約・成年後見人制度・遺言の各機能を1つの信託契約の中で実現できる。

②ニーズに即した自由な財産管理・資産継承方法の設計が可能。

③不動産の財産管理・資産継承対策として有効な方法である。

 これらのメリットは資産凍結を回避させるなど、100%万能というわけではありませんが、家族の負担や心配を軽減させる効果は十分に期待できると言えそうです。

(家族信託のデメリット)
 ①受託者への権限が集中することによる不公平感。

 ②受託者の負担。

 ③身上保護権がない。

  などが指摘されることがあります。

 デメリット①に関しますと、親の希望や思いを整理して家族会議を経て、信託契約の当事者のみならず、家族全員が納得してから始めることが前提ですので、不公平感が生ずるという事はあまりないように思われます。

 デメリット②に関しますと、受託者の負担が大きいことは、家族信託のみに限ったことではありません。委任契約や負担付き贈与契約など、受託者の負担があることは珍しいことではないように思われます。

 デメリット③に関しますと、ご契約本人様が認知症になられたのちに、介護施設への入居手続きなど身上保護が、家族信託では出来ない点は否めませんので、後見制度を併用するなど様々な制度を組み合わせて利用し、より良い財産管理・資産継承を模索することが大切になってくるでしょう。

 ”家族信託”をきっかけにして、普段なかなか家族で話し合うことがない相続のこと、資産承継のことなどをじっくりと話し合ってみる。そんな機会が作れることも大きなメリットの一つと考えてみてください。

 相続のこと、資産継承のことなど、ご心配やご不安に思われている方は、不動産や法律上の様々な相談ネットワークを持つ弊社へ是非お問合せください。(☎047-484-0949)