マンションを適切に維持管理するために  第3回

マンション管理

2025年1月10日

マンションを適切に維持管理するために、建物・設備の基礎知識を紹介していきたいと思います。

第3回 マンションの大規模修繕工事について(設備編)

■    マンションの設備とは

 マンションには色々な設備が備わっています。代表的な設備は次のとおりとなります。

「給水・給湯設備」 : 水・お湯を各住戸に供給する設備

「排水設備」 : 生活排水や雨水を下水道に放流する設備

「換気設備」 : 空気を室内に取り入れ、屋外に排出する設備

「消防設備」 : 火災の発生を感知して施設内の周知、消火活動などの設備

「電気設備」 : 電気を安全に使用し、照明や電源確保するための設備

「情報通信設備」 : テレビやインターネットを安定供給するための設備

「避雷針設備」 : 落雷から建物を守る設備

 その他にも様々な種類の設備があり、これらすべての設備が安全に稼働することで、日々の生活が成り立っています。管理組合として、マンションに備え付けられている設備を維持管理していくために、法定点検や定期点検または、修繕・更新工事などを適切に行う必要があります。また、どの設備がどのくらい保守・修繕費用がかかっているか把握しておく必要があります。

 今回は上記に挙げた設備の中の一部を取り上げ、説明していきます。

■    給水設備

給水設備の種類

① 給水管

 各自治体の水道本管から、施設内に引き込んだ配管がマンションの管理対象となりま

す。給水管の材質は「塩ビライニング鋼管」、「ステンレス鋼管」、「水道用ポリエチレン

管」、「硬質ポリ塩化ビニル管」などが使用されています。

「塩ビライニング鋼管」を使用している場合は、他の材質に比べ、耐用年数が劣ります

ので、30年程度で更生工事(延命)や更新工事を計画する必要があります。

その他の材質は耐久性に優れているため、50年以上の耐用年数が期待できます。

② 貯水槽

 上水道から引き込んだ水を一時的に溜めておくための水槽で、受水槽(建物の1階

や地階に設置)、高置水槽(建物の屋上などに設置)と呼ばれています。

水槽は年1回の槽内清掃・消毒と水質検査が必要となります。

③ 給水ポンプ

 給水が行き届かない場合に、圧力をかけて水を供給するポンプのことで、3種類あります。

 「揚水ポンプ」:受水槽から高置水槽に水を汲み上げるポンプ

 「加圧ポンプ」:受水槽から各住戸へ水を供給するポンプ

 「増圧ポンプ」:水道管から引き込んだ水を各住戸へ供給するポンプ

 年1回から年2回の点検が望まれます。

■    排水設備

各住戸などから出る排水を下水道や浄化槽に流す、生活に欠かせない設備になります。

マンションの排水には3種類あり、トイレの便器からの排水を「汚水」、台所・洗面・洗濯・浴室からの排水を「雑排水」、屋上やバルコニーからの排水を「雨水」といいます。

1. 排水管の劣化

排水管内部は、定期的な管清掃で詰まりを抑制しても、経年劣化により腐食などで漏水が

発生する恐れがあります。主に使用されている排水管の材質と耐用年数(目安)は次のと

おりとなります。

「配管用炭素鋼鋼管(SGP)」 : 20~30年

「銅管・硬質塩化ビニル管(VP)」 : 25~40年

「排水用鋳鉄管(CIP)」 : 30~40年

2. 排水管改修工事

 改修工事には給水管と同様に、更生工事(延命)と更新工事がありますが、更生工事は更

新工事に比べ、工期・耐用年数共に短くなり、費用も安くなります。マンションの状況に

あわせて工法を選定しましょう。

3. 雑排水管のメンテナンス

 雑排水管には、食べ物のカス、油脂分など様々なものが流されます。これらが蓄積すると

排水不良や悪臭が発生します。例えば、洗濯パンの排水が詰まると、雑排水が逆流し、下

の階へ漏水する恐れがあります。そのようなトラブルを防ぐために、定期的(年1回)な

雑排水管の清掃が必要となります。

雑排水管清掃は、室内から清掃を行う必要があります。未清掃が続くと排水トラブルの原

因となりますので、是非とも予定を調整して実施するようにしてください。

■    まとめ

すべての設備には寿命があります。日々の安心した生活を送るためにも、各設備の寿命を把握した中で、計画的に修繕もしくは更新を行う必要があります。設備の維持管理にはどうしても費用がかかってしまいますが、上手に計画修繕することで、管理費・修繕積立金を節約することに繋がります。管理会社や各種専門業者に相談し、総合的な判断をしていくことが重要です。

次回は「マンションの維持管理と保守点検について」をお話ししようと思います。