マンションを適切に維持管理するために

マンション管理

2024年12月13日

 マンションを適切に維持管理するために、建物・設備の基礎知識を紹介していきたいと思います。

第1回 マンションの構造と耐震性能

  • はじめに

 国土交通省の推計によると、マンションストック総数は約704.3万戸(2023年末時点)であり、令和2年国勢調査による1世帯当たり平均人員2.2人をかけると、約1,500万人となり、国民の1割超が居住している推計となります。

 マンションが多く建設されるようになった昭和30年代に、区分所有法が昭和37年に制定され、法律が整備されていきました。一般的にマンションとは、鉄骨コンクリート造(以下、「RC造」という。)または鉄筋鉄骨コンクリート造(以下、「SRC造」という。)で、3階建て以上の共同住宅を指します。

 RC造やSRC造の平均寿命は約68年、適切に管理すれば100年以上といった国土交通省の調査結果がまとめられています。よって、RC造やSRC造の寿命は、使用状況や大規模修繕工事などの適切な管理によって、寿命100年というのは十分に可能な話なのです。

  • マンションの構造

 マンションの寿命を延命するためには、まず、その構造を正しく理解することが必要です。

 RC造の特徴として、コンクリート(押される力に強く、伸ばされる力に弱い)と鉄(押される力に弱く、伸ばされる力に強い)の異なる性質を組み合わせる構造です。お互いの性質を補い合うことで、高い耐久性と耐震性を備えています。

 SRC造の特徴として、RCの中にさらに鉄骨を入れて強度を増した構造です。主に高層マンションに用いられます。

 また、現代では高強度コンクリートという特殊なコンクリート(プレキャストコンクリート)が使用され、前もって工場で製造されたコンクリート製のパネルのことであり、現場で組み立てるRC造の一種です。

構造形式とは、主要構造部の部材をどのように組み立て、建物をどう支えるかです。

1. ラーメン構造

 床を支える柱と梁を接合して強固な枠をつくり、建物を支える形式です。主に中高層マン

ションで採用され、耐震性や耐風性に優れますが、音が響きやすいのが特徴です。

2. 壁式構造

 厚く丈夫な壁で建物を支える形式です。主に低層マンションで採用され、耐震性に優れますが、柱梁が無い代わりに壁が多く、住宅内の変更の自由度は制限されます。

3. 耐力壁付きラーメン構造

 ラーメン構造に耐力壁を取り入れたもので、ラーメン構造と壁式構造の良い部分を合わせ

た形式です。最近のマンションに多く採用されています。

  • 耐震性能

 構造形式によって耐震性能が異なります。耐震性能を決める基準とは、建築基準法で定められている強度の基準です。1948年の福井地震の教訓から1950年に建築基準法が制定されました。その後、1971年に柱を粘り強くするために法改正され、1981年には建物を倒壊させないように法改正が行われました。過去の地震を教訓に耐震性能がアップするように法改正が繰り返されているので、建物年代によって、耐震性能がわかります。

  • 耐震改修

1981年以前に建築された建物は、現在の建築基準法で定める耐震性能を有していない建物が多いため、耐震診断が必要となります。

診断結果が基準以下である場合、耐震補強工事が必要となりますが、多額の費用が掛かります。また、費用だけではなく、補強計画によっては一部の居住者の負担が多くなるケースも考えられるため、住民との合意形成が難しくなる場合もあります。マンションの耐震補強には丁寧な説明による居住者との合意形成が欠かせません。

各地方自治体にはマンション耐震診断および耐震改修の補助制度がある自治体も多いので、有効に活用し、大地震が起きる前に検討してはいかがでしょうか。

次回は「マンションの主な修繕工事について」お話ししようと思います。